イソフラボン研究の歴史
イソフラボンは、高い健康効果と美容効果のある成分として人気を集めています。現在、イソフラボンを配合したサプリメントなどが多数販売されていますが、その効果が注目されるようになったのは比較的最近のことです。
イソフラボンは1990年代から世界中の注目を集めるようになり、急速に研究が進歩しました。
イソフラボンの存在は比較的古くから知られていた
イソフラボンは、大豆などのマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールです。
ポリフェノールは植物の苦味・渋味・色素成分であり、イソフラボンの存在は、大豆中の苦味成分として比較的古くから知られていました。日本においても、1930年代の大豆色素に関する研究でイソフラボン化合物についての報告があります。
イソフラボンのエストロゲン様作用が1940年代に報告されている
イソフラボンの分子構造は女性ホルモンのエストロゲンと非常によく似ており、体内でエストロゲンと似た生理作用を発揮します。その作用は「エストロゲン様作用」と呼ばれます。
イソフラボンのエストロゲン様作用が確認されたのは1940年代のことです。
マメ科の牧草を摂取したヒツジに不妊現象が起こったとの報告があり、それをきっかけにして女性ホルモンのような働きをする植物成分の研究が進められました。その研究の中で、大豆イソフラボンにエストロゲン様作用があることが報告されています。
抗がん効果への注目から1990年代に研究が加速
イソフラボンの健康効果に関する研究は、1990年代に入ってから活発に行われるようになりました。
1990年代に、アメリカ国立がん研究所(NCI)が中心になって、がんを予防するための「デザイナーフーズ計画」が開始されました。この計画は、がん予防に効果がある食品成分を特定して加工食品に加える目的で開始され、2,000万ドルという多額の予算が準備されました。
・デザイナーフーズ計画の最重要品目として大豆が注目された
デザイナーフーズ計画では、抗がん効果があると考えられる野菜類が40種類ほど公開され、その中の最重要品目に大豆が含まれていました。
大豆はデザイナーフーズ計画で紹介された食品の中で最も注目され、世界中の研究者が健康効果の研究に取り組みました。その結果、抗がん効果だけでなく生活習慣病の予防効果などの多くの健康効果が明らかになっています。
・がんに対する研究が数多くある
デザイナーフーズ計画はがん予防のための計画であり、イソフラボンのがんに対する効果について数多くの研究が行われました。特にイソフラボンには女性ホルモンに似た生理作用があり、乳がんや前立腺がんなどの性ホルモンに関係したがんについての研究が多数あります。
そうした研究において、イソフラボンを多く摂取していると、乳がん・前立腺がん・胃がん・肺がん・結腸がんなどの各種がんの発症リスクが低下することが報告されています。
ただし、イソフラボンの抗がん効果については未だ研究段階であり、明確な効果の解明については今後の更なる研究が期待されています。
ポリフェノールブームによって注目が高まる
イソフラボンの健康効果は、1990年代以降のポリフェノールブームをきっかけにして世間に知られるようになりました。
・1990年代にポリフェノールが注目される
フランス人は、ほかの西欧諸国の人々よりもチーズやバターなどの乳脂肪や肉類を大量に摂取しているにも関わらず、心臓病の死亡率が低い傾向があります。
その傾向に注目したボルドー大学の科学者は、フランス人が日常的に飲んでいる赤ワインに注目し、赤ワインに豊富に含まれる「ポリフェノール」を摂取すると生活習慣病の予防に効果的であると1992年に発表しました。
・ポリフェノールブームからイソフラボンも注目された
この科学者のポリフェノールに関する発表は、アメリカや日本で赤ワインブームや健康ブームを巻き起こしました。
赤ワインによるポリフェノールブームをきっかけにして、お茶・ブルーベリー・各種野菜などに含まれるポリフェノールも注目されるようになりました。
その結果、大豆由来のポリフェノールであるイソフラボンにも注目が集まり、効果に対する認知度が急速に高まりました。
現在も盛んに研究が行われている
以上のように、イソフラボンの存在自体は古くから認識されていましたが、その健康効果についての研究が盛んに行われるようになったのは比較的最近のことです。
イソフラボンの研究は現在も活発に行われており、毎年多数の研究報告がなされています。
そうした研究によって、イソフラボンの健康効果の解明がさらに進むことが期待されています。
