子宮内膜症とイソフラボンの関係
子宮内膜症の患者は、イソフラボンの摂取を控えるべきとされています。子宮内膜症は女性ホルモンのエストロゲンの働きによって進行し、イソフラボンにはエストロゲンと似た生理作用があるためです。
ただし、イソフラボンには過剰なエストロゲンの働きを弱める効果もあり、子宮内膜症に対する影響は正確には明らかになっていません。
子宮内膜症はエストロゲンの働きによって進行する
・子宮内膜症とは
子宮内膜症は、本来は子宮の内側だけにあるべき子宮内膜組織が、子宮以外の場所にできてしまう病気です。
子宮内膜は、女性ホルモンの影響を受けて増殖したり剥がれ落ちたりします。子宮内の場合は月経血として体外に排出されますが、子宮以外の場所にできた内膜は身体の中にとどまり、炎症や痛みの原因になります。
・子宮内膜症にはエストロゲンの働きが関係している
女性ホルモンのエストロゲンには、子宮内膜の増殖を促進する作用があります。そのため、エストロゲンの働きが強まると子宮内膜症が進行します。
子宮内膜症の症状改善にはエストロゲンの働きを抑えることが重要であり、そうした効果のあるホルモン剤が治療に用いられています。
イソフラボンにはエストロゲン様作用がある
イソフラボンの分子構造は、エストロゲンと非常によく似ています。
エストロゲンは、卵巣から分泌された後、細胞にあるレセプター(受け皿)と結合することで効果を発揮します。イソフラボンはエストロゲンと同じようにレセプターと結合して、エストロゲンと同様の生理作用を発揮します。そうした作用は「エストロゲン様作用」と呼ばれます。
エストロゲンの分泌量が低下している場合にイソフラボンを摂取すると、エストロゲンの作用が強まります。そのため、子宮内膜症の患者はイソフラボンの摂取を控えるべきとされています。
イソフラボンには抗エストロゲン作用もある
イソフラボンにはエストロゲン様作用がある一方で、エストロゲンの働きが過剰な場合はその働きを弱める作用もあります。そうした作用は「抗エストロゲン作用」と呼ばれます。
エストロゲンは細胞のレセプターと結合して効果を発揮しますが、イソフラボンもレセプターと結合するため、競合してエストロゲンとレセプターの結合を妨げます。
イソフラボンの作用の強さは、エストロゲンの1,000分の1以下の非常に弱いものです。そのため、エストロゲンが過剰な場合にイソフラボンを摂取すると、エストロゲンの作用が相対的に弱まります。
子宮内膜症の細胞増殖を抑制するという研究報告がある
イソフラボンが子宮内膜症の細胞増殖を抑制したとの研究報告もあります。
特殊な処理を施したイソフラボンを子宮内膜症のマウスに投与したところ、子宮外にある内膜組織の細胞増殖が抑制されたことが、民間企業と京都府立医科大学の共同研究で報告されています。
子宮内膜症の患者はイソフラボンの使用を控えるべきとされている
以上のように、イソフラボンにはエストロゲン様作用と抗エストロゲン作用があり、エストロゲンの作用を強める場合と弱める場合があります。子宮内膜症に対するイソフラボンの正確な影響については明らかになっていません。
しかし、イソフラボンがエストロゲンの働きに影響することは間違いなく、子宮内膜症に悪影響を及ぼす可能性があります。
医療分野においては、安全性が確立されていないものの使用は避けるという原則があります。そのため、子宮内膜症の患者はイソフラボンの摂取を控えるべきとされています。
なお、イソフラボンは大豆に含まれていることで有名ですが、大豆以外のマメ科の植物にも含まれています。
国立健康・栄養研究所の『「健康食品」の安全性・有効性情報』には、大豆イソフラボンだけでなく、レッドクローバーやクズ(葛)由来のイソフラボンについても、子宮内膜症の患者は摂取を控えるべきと記載されています。
通常の食事による摂取は問題とされていない
イソフラボンは大豆関連食品に多く含まれていますが、通常の食事での摂取については一般的に問題とされていません。大豆には抗エストロゲン作用があるとして、摂取が推奨されている場合もあります。
また、食事からの大豆摂取は、子宮内膜症と同じくエストロゲンの働きによって進行する子宮体がんや子宮内膜増殖症の発症リスクに影響を与えないとする研究報告があります。
子宮内膜症であっても、通常の食事でのイソフラボン摂取に関して過度に心配する必要はありません。
ただし、症状への悪影響のリスクを考慮して、イソフラボン配合のサプリメントなどの使用は控えるようにしましょう。